

「今日もまた、動かない」
「リハビリは続けているのに、何も変わらない気がする」
──脳卒中後のリハビリ生活では、必ずそう感じる日が訪れます。
がんばっているのに、進んでいる実感が持てない。
まるで時間だけが流れて、回復が止まったように感じる──。
けれど、“変化が見えない日”は、何も起きていない日ではありません。
むしろ、身体と脳の深いところで、「目に見えない回復」が積み上がっている時間なのです。
今回はその「静かな進化」に気づく方法と、焦りに心を飲まれない考え方をご紹介します。
脳卒中の回復は、決して階段のように一定のペースで上がっていくものではありません。
それは“波”のようなものです。
上がったり、下がったり、同じところにとどまったり。
でも、見えないところで確実に、脳と身体のつながりが再構築されているのです。
フェーズ | 見た目の変化 | 内側で起きていること |
---|---|---|
A期 | あまり変化がない | 神経の再配線・脳内の学習・感覚の調整 |
B期 | 突然の改善が見える | A期での準備が実を結び、新しい動作が出現 |
つまり、「何も変わらないように見える時間」こそが、次の変化を生む“根の時期”なのです。
では、実感が持てないとき、どうやって「前に進んでいる自分」を確認すればいいのでしょうか?
そこで大切になるのが、メタ認知的セルフチェックです。
このように、自分の感じたこと・考えたこと・行動を“外から眺める視点”を持つと、
「進んでない」という主観を疑うことができます。
疲れている、やる気が出ない、気持ちが落ち込む。
そんな日は、無理にやらず、“何もしない”ことを選ぶ勇気も必要です。
✔「休む」ことも、脳と身体にとって大切なリハビリです。
他人と比べるのではなく、1週間前、1ヶ月前の自分と向き合ってみましょう。
✍日記やメモ、写真や動画で振り返ると、
「あの時できなかったことが、今はできている」と気づけます。
変化が見えないなら、「維持できていること」に目を向けてください。
すべてが、「失わずに守れている力」です。
停滞期は、ご本人が自分を責めがちです。
そんなとき、励ましよりも効果的なのは──
✔「言葉にならない気持ちに、付き添ってくれる存在」になること
無理に「大丈夫」と言わなくても構いません。
ただ静かにそばにいて、「今日はゆっくりしようか」と声をかけてあげてください。
それだけで、「理解されている安心感」が生まれます。
リハビリは「昨日より今日がよくなる」ことだけを目指すものではありません。
**「変わらずにいる力」「諦めずにいる意思」「続けている日々」**が、
いずれ必ず、目に見える形で“跳ね返って”きます。
「今日、あまり変わらなかったな」と思ったら、こう言い換えてください。
「今日もよく耐えた。
変わらない日を、手放さずに歩けた。
私は進んでいる。」
✅ 寝る前に、自分にこう問いかけてください。
「私は、何を続けている?」
たとえその答えが、「ベッドから起きること」でも、「毎日食べること」でも、
それはあなたが明日へ向かって進んでいる証拠です。
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