

~感覚の目覚めが、手足ともう一度つながる鍵~
脳卒中のリハビリといえば、まず「動かす練習」を思い浮かべる方が多いでしょう。
もちろん、動かすことはとても大切です。
でも、「動かす前に必要なこと」があるのをご存知ですか?
それは、“感じる力”を取り戻すことです。
脳卒中後の体は、自分の手足であっても、どこにあるのか分からないと感じることがあります。
これは、「感覚の低下」や「自己身体認識(ボディイメージ)」の混乱が起きている状態です。
そこで、まず問いかけてみてください。
✅「私は今、右手の位置を“感じられている”だろうか?」
✅「足がどこにあるのか、言葉で説明できるだろうか?」
このような「感覚への問いかけ」が、動かす前の“つながり直し”になります。
感覚への気づきが戻ってくると、次のような変化が起こり始めます。
感覚の変化 | 実際に起こること |
---|---|
自分の手や足の位置が分かるようになる | 動作がスムーズになり、転倒が減る |
手の重さや冷たさに気づける | 手を守ろうとする動作が自然に出る |
タッチの感覚が戻る | 物を「触る」「握る」の動作がしやすくなる |
🔑「感じられること」は、「動かせること」の土台になります。
以下のステップで、感覚の再認識をうながしていきましょう。
麻痺側の手や足を反対側の手や、ご家族の手で優しくさわる。
手のひら・指・足の甲・ふくらはぎなどを丁寧になでます。
触れている場所を見ながら、
「ここが自分の手だ」「ここが足の外側だ」と意識して観察します。
触れた感覚を言葉にしてみましょう。
「少し冷たい」「重い感じがする」「あまりわからないけど、触られてるのは分かる」──
どんな感覚でも構いません。“気づこうとする姿勢”そのものが、脳に刺激を与えます。
動かす練習に比べて、“感じる練習”は地味に見えるかもしれません。
でも、ここが抜けていると、どれだけ筋力が戻っても動きはギクシャクしたままです。
患者さんが「感じられない」と言っても、責めず、比べず、
「少しずつ戻るから、焦らなくていいよ」と声をかけてください。
触れる・見守る・一緒に驚くことが、感覚を育てる一番の近道です。
麻痺した手足は、“ただ動かなくなった”のではありません。
「自分の体という実感」が薄れているのです。
その感覚を少しずつ取り戻していくことで、
あなたの手足は、もう一度“自分のもの”として戻ってきます。
✅ 寝る前に、自分の手や足を「3秒ずつ」やさしくなでてみましょう。
そのとき、「ここが私の手」と心の中でつぶやいてください。
それだけで、脳と体の「会話」が再開されます。
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